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巻頭通信2018年11月号


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寛容性の高さが日本の将来の鍵を握る

理事 西村 亮平

犬は最低でも1.5万年前、最近の研究では4~5万年前から人と生活を共にしてきたと考えられており、犬以外の動物が家畜化されたのが農耕生活が始まる約1万年前以降であることと際立った違いがあります。それを可能とした大きな理由が、犬が持つ高い社会的寛容性であり、この点がオオカミと犬を分かつ大きな違いとなったことは疑いようがありません。
行動神経科学や行動内分泌学の第一人者である麻布大学の菊水健史教授はこう語っています。“社会的寛容性が低く、不安が大きいオオカミは森に残り、社会的寛容性が高く楽観主義の犬は草原に出てきて、チンパンジーを残して森を出た人と出会ったと考えられます”。当然ことながら、人と犬がともに暮らすようになった理由として、人の社会的寛容性の高さも大きく関係しています。この点は犬とオオカミの関係と同じように人とチンパンジーとの決定的な違いであり、これにより人は森に残ったチンパンジーと別れ草原に出ることができたと考えられます。すなわちどうぶつと暮らす幸せな社会を作るということは、いかにお互いの寛容性を高めるかということに他なりません。
人は知らないこと経験のないことは誤っていると判断しがちですが、知っていること経験のあることは正しいこととして受け入れやすい性質を持っています。一方小さな子供の多くは動物に強い興味を示すことから、動物に対する感受性が高い時期と考えられます。この幼少期に動物を見たり、触ったりする経験は、大人になったときに“知っている、経験がある”ものとして動物に対する寛容性の高さに結び付くと考えられます。大人にとっても暮らしの中で犬や猫をはじめとする動物を見る機会が多ければ、それを当たり前の光景として受け入れやすくなります。子供のころに動物と触れ合う機会を増やすこと、ルールを守りながら日常の風景の中に数多くの動物を登場させること、そのような地道な努力は、どうぶつと暮らす幸せな社会づくりに大きく役立つと考えられます。
現代の日本社会は、ますますストレスフルな時代になってきています。急速にネット社会に移行したことで、どこにいても誰でも瞬時に大量の情報を得ることができるようになりました。このことは、一定の地域や富裕層のみに集中していた情報を誰でも容易に得られるようになった点で功績は大きいですが、一方でその便利さゆえに人々はそこから逃れることができず強いストレスをうけることになりました。情報の正確性や重要性が吟味されずに瞬く間に拡散するようになり、“炎上”と呼ばれる状態が頻発し、誤った情報であってもネット上を永遠に彷徨い、一度失敗するとやり直しがきかない(許さない)という風潮も強くなりました。
日本という国が世界の中での経済的優位性を失い、なんとなく自信のよりどころだった技術的優位性もなくなりつつある中で、正義と大義が失われ何を信じていいのか分からなくなくなってきています。このような社会状況で、人が寛容性を高く保つことは簡単なことではないと思います。そこで生じる典型がいじめ問題です。いじめとは自分、あるいは自分のグループと異なる部分を認めようとする寛容性の欠如に他なりません。さらには社会的寛容性の低下は地域間、国間、宗教間の軋轢を容易に生み出します。社会的寛容性を高めたどうぶつと暮らす社会を目指すことは、実は人間社会の普遍的問題を考えることになると思います。
いい悪いは別にして、今の犬や猫の幸せと人の幸せは密接にリンクしています。どうぶつと暮らす幸せな社会作りは、人間にとって幸せな社会とは何かを考えることでもあります。今後もどうぶつと暮らす幸せな社会作りのために地道な活動を続けていきたいと思います。

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