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巻頭通信2019年4月号


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仕事:どうやって継続する?どうやって発展させるか?

副会長 川田 睦

病院経営、会社経営は、難しいですね。早く自分の責任、義務、分担を終えて、自由に生きていければと思いますが、なかなかそうは行かないです。開業獣医師でそう思っておられる方は、少なくないのではないかと思います。
正直なところ私も「早いところ、今の役目を終えることができたらいいな」と毎日考えながら出勤しています。昔はそうでもなかったのですが、今はそうです。
 理由はいろいろ思い浮かびますが、最も大きな理由は「仕事が楽しくない!」ということに集約されるのでしょう。じゃあ、なんで楽しくないかというと、どうにもあまり良くなさそうな将来が待っているような気がして、不安なのです。
昔から骨折症例が来ると、手術設計が好きで「これは、これを、こうして、こうなって、こうするためには、これとこれが必要で、たぶん今の状況から結果はこんな感じで、合併症はこれこれで、ピットフォールはこれだよね」という感じでやってきたせいか、経営者になっても同じような思考回路で毎日を過ごしています。
 じゃあ同じように楽しいはずなのですけれど、なかなかそうはならない。将来におけるネガティブなイメージしか想像できない。その原因は、おそらく「経営のルールを知らない、トレーニングされていない」ということが原因の一つだと最近は思うようになってきています。やらなければならないこと、知らなければならないことは、とてもたくさんあります。
会社、病院が抱えている問題点の抽出と解決策の提示。正確に問題点を抽出するのは結構難しく、マクロ的にも、個人的にも右肩上がりの成長期は感覚的になんとなくで、行き当たりばったりで済んでいたように思いますが、今は大変です。
まずは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の用語の理解から始まる、財務上の問題点のあぶり出し。今も謎の部分はかなりありますが、ようやく少しずつですが理解することができるようになってきました。
よく知る同業他社で規模が異なる会社や異業種の決算書を見させていただく機会があり、またそれぞれの会社の税理士さんとも話をする機会があってその経験は私の財務に関する知識を作るのに、かなり重要なものとなっています。
一つの会社は、創業52年、脱サラからはじまって、創業者がひたすら真面目に働いて得た利益で、支店をいくつも出しました。最盛期には8店舗ほどあり、現在はテナントのみになりましたが、同一県内に6店舗が稼働しています。全体の決算は黒字ですが、わずかな利益しかありません。債務超過の状態ではありませんが、創業者の個人的な献身的な努力と愛情が会社を維持運営している状態だと言っていいと思います。
この会社を承継して、存続、発展させるのはかなり難しく、最終的にはどのように優しく柔らかく、あまり傷つかず解散するかが、これからの課題になると思います。
もう一つは、創業20年、順調に成長して、地域一番店となり、創業13年目に少し離れたところに分院を展開した動物病院です。
支店を出したあたりから、財務状況が急速に悪化しています。本院は非常に多くの患者さんが来院し、とにかく忙しい。分院は競合する施設が多く存在するいわゆるレッドオーシャンな地域、なかなか患者数が伸びず、赤字がどんどんと膨らんで行っていました。しかし本院の売り上げが順調に伸びていることなどから、全体としてみればそれほど問題がないと思っていたようです。しかしこの本院は、顧客単価が低かったため、大変忙しい病院でしたが利益はそれほどでもありませんでした。また設備投資にもあまり熱心ではありませんでしたから、開院当時から更新されていない機器が多く残っており、昔に購入した設備で運営していたおかげで、利益はある程度でている状態でした。余力がありませんから資産の形成を行うことができておらず、気が付いた時には、機器を更新する資金がなく、4年前に銀行から大きな借り入れを余儀なくされています。この施設の問題点は、そこで働く人たちが、自分たちの働いている施設は上手くいっていると勘違いしていたことでしょう。確かに毎日とてもたくさんの患者さんが来ていましたから、そう思うのも無理はなかったかもしれません。
しかしこの施設の潜在能力は高く、4年前に大きなテコ入れをすると同時に、経営形態と運営形態の問題点を洗い出し、設備投資や人件費を含めた予算配分の見直しをするとともに、施設の経営状態を働く人々に正確に伝えるように情報の開示と説明をすることで、意識改革がすすみ、課題は残るものの本院、分院とも危機的な状況を脱するとともに、なんとか継続と発展の道が開かれてきているようです。
次は、働いていただくスタッフへの、適正な評価と賃金の分配です、ここには残業の抑制と有給消化率の向上なども含まれてきます。私は獣医師に関しては、個人の売上高と労働分配率、売上高人件費比率などの指標などから、給与をできるだけ客観的に決めていく方法を取っています。また、出てきた数字を担当の社外の監査役をしていただいている税理士の方、顧問の方にも見ていただき、適正基準に収まっているかどうかの判定を行うようにしています。労働分配に関しては、私が非オーナー系の経営者なので、病院と個人を分離するのが困難なオーナー系経営者と比較すると案外楽なのかもしれません。
人件費と設備投資、会社資産の形成とのバランスをどうするかというところも含め、大変難しい問題で、いずれも財務状況次第なところもありますが、働く人が、楽しく、一生懸命働く環境があってこその施設の繁栄ですから、数字だけではない、スタッフのモチベーションを維持できるような、会社づくりは重要だと思っています。
設備投資に関しては、社会情勢や地域経済、事業内容の今後の盛衰などに配慮した需給の状況を想像しながら、バランスの取れた設備投資を継続的に断続的に行っていく必要があります。これもなかなか難しく、つい先日もMRI装置を3Tに更新を行ったばかりですが、過剰投資ではないのか?との疑念は常に付きまとっています。病院施設は、ほんとうにあっという間に、陳腐化してしまうものが多いのですが、いずれも高額なものが多く、どのタイミングで先端的な機器を導入するのかは、施設の目的にもよりますが、その判断は、経営状況を直撃するだけに、慎重かつ大胆な投資が必要と思っていますが、とにもかくにも過剰投資の結果倒産した企業は非常に多く、また借り入れを行えば、責任者として個人保証が付いて回りますから、一家離散の憂き目にあわないように、何をするにも慎重に十分に計画を練って対応するようにしています。
最後に会社資産の形成です。私の会社のように多くの同業者から出資をつのって開設された施設は、全国にいくつか存在すると思います。スタートの時には気づかないことが多いのですが、会社が存続すれば、創業したメンバーたちはやがて卒業して、次の世代が継承していくことになります。しかしながら、私の知る限り、こういった形態の会社は、法人としての資産形成が苦手な場合が多く、借り入れを行わない範囲での、設備投資の繰り返しなどで消費できている時は良いのですが、施設本体の更新や超高額機器の購入などになってくると、先ほど述べたように、現実的には個人保証が必要になってきます。事業継承でそのことまで、継承させるのは酷ですし、通常の勤務医で個人資産を担保として補償を受けることができる人は、現実的にも精神的にも本当に少ないと思います。そのためには、利益が出ているときに計画的に、法人の資産をかなり多く持つ必要性があります。まだ若い間に合う施設は、是非検討してほしいと思っている分野です。
会社は、始める時より、終わらせるときのほうが難しいのだと最初の決算書の会社を見ていて思います。動物病院もあまりに大きくなってしまうと、上場して資金を集めるとか、より大きな同業、異業種への売却などが現実的な選択になるかと思います。一般社会では、そういった形で継続している会社や施設は周りを見れば数多くあります。でもちょっと切ないですね。

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